低刺激で洗浄力が高い石鹸系シャンプーの特徴!!
シャンプーに関心がない人にとっては「えっ!石鹸でシャンプー?」と思われるかもしれませんが、高級アルコール系シャンプーの次に市場に出回っているのがこの石鹸系のシャンプーです。
石鹸系シャンプーとはその名の通り石鹸の成分をベースに研究・開発されてきたシャンプーです。今でこそ、液状でボトルに詰められ使いやすい状態で販売されている場合が多いですが、現在の液状シャンプーが普及する一昔前は固形石鹸を泡立てそのまま洗頭に使われてきました。髪の毛を洗う行為そのものは大昔から行われてきましたが、シャンプーという言葉が一般化され最初に普及したのが【シャンプー向けに開発された固形石鹸】で最も歴史の古いシャンプー剤とも言えます。
そもそも石鹸って何?
「石鹸とは?」
身近過ぎる物ほど、急に聞かれると答えにくかったりしますよね。石鹸もその身近過ぎる物の一つではないでしょうか?石鹸系シャンプーは、石鹸の成分をベースにしているシャンプーです。まずは石鹸系シャンプーの前に石鹸について説明していこうと思います。
石鹸は本来混ざることのない油と水を馴染ませることのできる界面活性剤の1種で、動物や植物の油【油脂】をアルカリ剤である水酸化ナトリウム【苛性ソーダ】や水酸化カリウム【苛性カリ】などで煮ることで生成されます。この時水酸化ナトリムで煮ると固体化し固形石鹸や粉石けんの元となります。逆に水酸化カリウムで煮ると液体石鹸となります。専門用語で固形石鹸のことを脂肪酸ナトリムもしくはソーダ石鹸と呼び、液体石鹸のことを脂肪酸カリウムもしくはカリ石鹸と呼びます。
どちらも石鹸も強い洗浄力を持ちながらも高級アルコール系の界面活性剤と比べると皮膚に対する刺激が少ないのが特徴です。また、石鹸は自然界に存在する天然の動物や植物の油脂を原料として作られており、使用後は分解され再び自然に戻るため、環境に優しい界面活性剤としても注目されています。
また石鹸は弱酸性である脂肪酸と強アルカリ性の水酸化ナトリウム【苛性ソーダ】や水酸化カリウム【苛性カリ】でできているので最終的には必ず弱アルカリ性になります。
石鹸系シャンプーのメリットとデメリット
石鹸系シャンプーは少し癖があり、アミノ酸系シャンプー・高級アルコール系シャンプーと違い、その性質を理解しておかないと思ったように髪質をコントロールできなかったり、思わぬ頭皮トラブルをもたらす原因になってしまう可能性があります。
もちろん、正しく理解して使用するならとても優秀な界面活性剤で、特に環境への負担は他の界面活性剤と比べると、圧倒的に良いと言えます。ここからは石鹸系シャンプーのメリットとデメリットを詳しくまとめていこうと思います。
石鹸系シャンプーのメリット
微生物が分解をしやすく環境に優しい
石鹸系シャンプーのメリットとして一番にあげられるのが環境への負担が少ないということでしょう。環境への負担が少ないというのは生分解性が良いということです。
【生分解性】・・・少し聞きなれない言葉だと思います。生分解性とは水中や土中の微生物が有機物を無機物にする性質のことを指します。つまり生分解性が良いというのは、微生物にとってとても分解しやすい物質の事を指すのです。先ほども説明しましたが、石鹸は動物や植物の油脂つまり元々分解しやすい物質が元となっています。またその構造も単純なため、水で洗い流すと1日もあれば微生物によって無機物に分解され環境に害の無い物となります。
これとは違い、他の合成洗剤などは(種類にもよりますが)構造が複雑な場合が多くさらにいろいろな添加物が含まれている場合がほとんどです。その分、生分解性が悪く物によっては、石鹸系シャンプーの10倍以上もの時間をかけなければ無機物に分解することが困難な洗剤もあります。
低価格で経済的
そもそも原料が石鹸なので、アミノ酸系シャンプーなどと比べるとコストパフォーマンスが良いです。もう少し細かく言うと石鹸形シャンプーは大きく固形石鹸タイプ【脂肪酸ナトリム】と液体石鹸タイプ【脂肪酸カリウム】に2つに分かれますが、固形石鹸タイプ【脂肪酸ナトリム】の物が資材・製造工程上の関係から安価になる傾向にあります。
洗浄力が強くすっきりと洗い上げることができる
石鹸シャンプーは弱アルカリ性でその特性上、脱脂力が非常に強いです。そのため、頭皮や髪の毛の皮脂をしっかりと除去することができ、洗い上がりがさっぱりとした仕上がりになります。
アトピーや敏感肌体質に合う場合がある
石鹸系シャンプーは動物や植物の油脂を元に生成されていてその大半は天然の原料でできています。尚且つ香料や着色料などの添加剤を使用しない無添加な物が多いので、高級アルコール系シャンプーなどのに配合されている化学物質や添加物に反応してしまっていたアトピーや敏感肌が改善される場合があります。
- 他の界面活性剤を使用しているシャンプーより環境に優しい。
- 低価格で経済的。
- すっきりと洗い上げることができる。
- アトピーや敏感肌か改善される場合がある。
石鹸系シャンプーのデメリット
頭皮に必要な皮脂まで除去してしまう可能性がある
石鹸系シャンプーのメリットでも紹介したように石鹸系シャンプーは脱脂力が非常に強いです。そのため頭皮に必要な皮脂まで取り除いてしまう可能性があります。
多すぎる皮脂は雑菌などを異常繁殖させてしまい、その結果ヘアサイクルを乱してしまう可能性がありますが、根こそぎ皮脂を取り除くのはそれはそれで問題です。皮脂は髪の毛の保湿効果や紫外線などの外部刺激などから頭皮や髪の毛を守る働きがあるからです。そのため石鹸系シャンプーは皮脂分泌量が多い人には最適ですが、その量が普通・もしくは少な目の方には不向きな洗剤となってしまいます。
石鹸系シャンプーの後は必ず酸性リンスが必要
石鹸系シャンプーはその製造工程上必ず、水酸化ナトリム・水酸化カリウムなどの強アルカリを使用するため、動植物の油脂(酸性)を原料としている石鹸は必ず弱アルカリ性になります。そして、この弱アルカリ性が髪の毛や頭皮に悪い影響を及ぼす場合があります。
まず1つ目が、キューティクルの開きです。私たち人間の皮膚(頭皮)や髪の毛は通常弱酸性です。しかしアルカリ性はその特性上キューティクルを開けてしまう性質があるのです。本来髪の毛は濡れているだけでキューティクルが開くのですが、アルカリ性はその開いたキューティクルをさらに開けてしまいます。キューティクルは【髪の毛の構造】で説明しているように、髪の毛に汚れが付着しにくくしたり髪の毛の内側に蓄えられている水分を外に逃がさないようにする働きがあり、このキューティクルが開いている状態が長く続くと、髪の毛がパサパサになったり、枝毛や切れ毛の原因になってしまいます。
そして2つめに、常在菌バランスの乱れがあげられます。
頭皮には数多くの常在菌が存在しています。菌というと、病原菌のような悪い印象を受けてしまいますが、頭皮に生息している常在菌は非常に大切な役割をになっています。一口に常在菌といってもその種類は、マラセチア菌・アクネ桿菌(かんきん)・表皮ブドウ球菌・黄色ブドウ球菌など様々ですが、これらの常在菌は新陳代謝で剥がれ落ちた角質(フケ)を分解したり、頭皮を弱酸性に保つことにより頭皮(皮膚)に害のある菌への抵抗力をアップさせるなどの役割があります。ここに弱アルカリ性である石鹸系シャンプーで洗頭をすると、一時的に常在菌が激減し常在菌が正しく機能しなくなってしまう場合があります。結果、頭皮から不快な臭いがしたり、外部から進入しようとする病原菌への抵抗力を下げてしまう可能性があるのです。
これらは、通常弱酸性である頭皮(皮膚)がアルカリ性である石鹸系シャンプーを使用することでアルカリ性側に傾いてしまうことで起こります。これらを防ぐためにはアルカリ性に傾いてしまった頭皮を弱酸性に戻してあげることが必要なのです。ここで活躍してくれるのが弱酸性のリンスやコンディショナーです。これらを使用することでアルカリ性側に傾いた頭皮や髪の毛を中和または弱酸性に戻すことが可能です。その他にもレモン汁やクエン酸・お酢などの酸性の物質を水に溶かして使用することで、専用リンスやコンディショナーと似たような効果を得ることができます。
石鹸系シャンぷにオススメなクエン酸シャンプーについては、【クエン酸で髪の毛がサラサラに!?クエンサンが髪の毛に与える効果】で紹介しています。
アトピーや敏感肌体質に合わない場合がある
石鹸系シャンプーのメリットで、【アトピーや敏感肌体質に合う場合がある】と紹介しましたが、その逆で合わない場合もあります。世間一般に幅広く流通している高級アルコール系シャンプーは安価な製品を大量生産する為に沢山の化学物質が含まれています。この化学物質がアレルギー反応を引き起こしている場合があるのですが、このような場合天然由来の原料を使用している石鹸系シャンプーを使用するとアレルギー反応を抑えることができる場合がある反面、その強い洗浄力で頭皮の汚れと同時に頭皮にとって必要な皮脂まで除去してしまう場合があります。
先ほども説明していますが、皮脂には髪の毛や頭皮に対する保湿効果や紫外線などの外部刺激から頭皮や髪の毛を守るバリアの働きがあります。そのため、石鹸系シャンプーで皮脂を取りすぎるとアトピーや敏感肌・乾燥肌が悪化してしまいう場合があるのです。
石鹸カスが髪の毛・頭皮に残り「ごわつき」や「きしみ」の原因に!!
石鹸系シャンプーを長く愛用している人なら誰でも一度はこの石鹸カスを経験したことがあるでしょう。石鹸カスとは別名【金属石鹸】とも呼ばれていて、石鹸が水中に含まれているミネラル分(マグネシウムやカリウム)と反応して中性の水ではほとんど溶けることのない物質に変性した物のことを指します。石鹸系のシャンプーを使用すると髪の毛に「ごわつき」や「きしみ」を感じるのはこの石鹸カスが髪の毛に留まっていることが原因の1つとなっています。
石鹸カスを発生させしまう可能性がある石鹸系シャンプーはアルカリ性ですが、ミネラル分と出会い石鹸カスになることでアルカリ性の洗浄能力のほんとんど失われます。そのため、石鹸カスが髪の毛や頭皮に多少残っても直接的に抜け毛や薄毛に繋がることはありません。しかしこれも程度の問題で、あまりにも石鹸カスで頭皮がギトギトになっていると、頭皮に生息している常在菌が異常繁殖してしまい【はげ】に繋がる可能性があります。また、石鹸カスは見た目フケと間違われることもあり、見た目の印象も決して良いものではありません。
また石鹸カスは高級アルコール系シャンプーから石鹸系シャンプーに切り替えた直後に多く発生する場合が多く、これは高級アルコール系シャンプーに含まれている保湿剤やシリコンなどのコーティング剤等が頭皮や髪の毛に残っていることが原因の1つで、これらの成分が髪の毛や頭皮に残っていると泡立ちも悪く石鹸カスの発生量も多くなりますが石鹸系シャンプーを使い続け頭皮や髪の毛に残留している保湿剤やシリコン等の成分が少なくなると、石鹸系シャンプーの泡立ちも良くなり石鹸カスの発生量も少なくなってきます。
ただし、日本国内でも石灰質の山付近や温泉地などの特定の場所は水中のミネラル分が多く石鹸カスが非常にできやすい環境である場合があります。石鹸系シャンプーを正しく2~3ケ月も使い続ければ頭皮・頭髪環境が整い石鹸カスが出にくくなりますが、どうしても石鹸カスの量が落ち着かない場合は水道水に含まれるミネラル分の量を疑ってみるのも良いかもしれません。
- 頭皮・髪の毛にっと必要な皮脂まで除去。
- 酸性のリンスやコンディショナーで中和する必要あり。
- アトピーや敏感肌が悪化する可能性あり。
- 石鹸カスの影響で「きしみ」「ごわつき」が。
石鹸系シャンプーは、はげ予防目的では扱いづらい
石鹸系シャンプーは環境にとても優しいと界面活性剤ですが、はげ予防の観点から言うと非常に扱いづらいシャンプー剤となってしまいます。
一番の理由はその強すぎる洗浄力です。石鹸系シャンプーのデメリットで紹介しているように石鹸系シャンプーは洗浄力が非常に高いため、頭皮や髪の毛に必要な皮脂まで根こそぎ除去してしまう可能性があります。さらに石鹸系シャンプーは他の界面活性剤を使用しているシャンプーよりもアフターケアが非常に大切になります。
アルカリ性側に傾いてしまった髪の毛や頭皮を酸性のリンスやコンディショナー中和する必要があったり、石鹸カスが残らないように他の洗剤よりも念入りにすすぎが必要だったりもします。これらの石鹸系シャンプーへの知識が無ければ、頭皮・髪の毛のケアどころか逆に髪の毛や頭皮にダメージを蓄積させてしまい、ひどい場合は【はげ】が進行してしまうことさえあります。
石鹸系シャンプーが悪い訳ではありません。自然派思考や髪の毛が丈夫で皮脂分泌が多い方には石鹸系シャンプーがおすすめのシャンプー剤となります。がやはり、はげの予防目的では扱いづらいものであることに間違いはないでしょう。
石鹸系シャンプーの見分け方と成分
石鹸系シャンプーは高級アルコール系シャンプーの次に市場に流通しているシャンプーでアミノ酸系シャンプーとは違いドラックストアなどでも気軽に購入することができるシャンプー剤となっています。しかし商品自体にでかでかと【石けんシャンプー】と記載されていれば一目瞭然ですが、商品によっては、石けん系のシャンプーでありながら商品名に【石けん】の文字を使用していなシャンプー剤も少なからずありますので、最後に石けん系シャンプーの見分け方を説明しておきます。
【シャンプーの(洗浄成分)種類と若はげにおすすめなシャンプー】でも説明していますが、日本には薬事法という法律があるため、使用されている成分を商品が入っているボトル等に記載する義務があります。さらに成分の表示順も使用量の多いものから記載しなければなりません。つまり、石けん成分が成分表の上位の2~3番目に記載されていればそれは石けん系のシャンプーとなります。(※液体シャンプーの場合1番は必ず「水」になります。)
- 石けん分
- 純石けん分
- 石けん素地
- カリ石けん素地
- 脂肪酸ナトリウム
- 脂肪酸カリウム
上記に記載している、石けん系の成分が成分表示一覧表の上位に記載されていれば、それは石けん系シャンプーと見て間違いないでしょう。